車山湿原
 車山高原特有の山地草原
 6月下旬の車山湿原です。
 手前の白い花がコバイケイソウの群落です。
 その前方に展開しているのがレンゲツツジ
 朱色の花がうつくしい!
 右手が車山山頂へ向かう山道です。
 昼間でも2.3頭の鹿の群れに出合います。
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諏訪地方に生息する動物達
 目次    1、哺乳類と日本列島  2、諏訪の哺乳類(ニホンザル) 3、諏訪の哺乳類(ニホンカモシカ)
 4、諏訪の哺乳類(ヤマネ)  5、諏訪の哺乳類(ツキノワグマ)
 6、諏訪地方の植生区分からみた動物  7、諏訪地方の小哺乳類

1、哺乳類と日本列島
 車山高原から眺める白樺湖と蓼科山

日本列島はユーラシア大陸に隣接した島嶼群ですから、陸続きになった時代が度々あり、氷河期にも幾度かユーラシア大陸の東端であり続け、しかも温暖化となっても陸橋が繋がり、行動範囲の広い哺乳類がアジア大陸から頻繁に移入し続けてきました。
 最後の氷期が終わり、宗谷海峡が海水面下に没したのが、更新世の終末から完新世の初頭、約1万3,000年〜1万2,000年前であったとみられています。ほぼこの時期に日本列島は、完全に大陸から分離したようです。やがて日本列島の生物が孤立個体群として独自に進化を遂げていきます。また、南北に3,000kmと長く、しかも3,000m以上の高山地帯をもつため、高山帯から亜熱帯までの多様な環境下に適応していきます。
 日本列島とそれに属する島嶼群に生息する陸生哺乳類が約130種あり、そのうち3割を超える固有種が誕生しています。多様かつ独特の哺乳類相が生息しているのです。その一方では、北海道や対馬などのユーラシア大陸に近い地域では、それら固有種に加え大陸系の種も混在しています。
 長野県の哺乳類は49種があり、諏訪地方では38種が確認されています。日本列島が島孤となると、当然大陸との交雑が止み、むしろ生息地の植生に伴う分化が進み、日本列島とその属島各地で特化した生態系を誕生させます。
 日本列島の哺乳類は、シベリア・沿海州に近縁する種や、中国大陸北東部と朝鮮半島、中国大陸南西部や東南アジアに近縁する南北にわたる種が入り交じっています。長い地質時代、アジア大陸の東縁の地であった現在の日本列島に、諸動物は幾度ともなく行き着き、定着・競争・分化・絶滅を繰り返してきました。
 動物界にある諸生物は、種の保存が絶対的な役割で、それが総てともいえ、似た生態系にあり生存圏を同一にすれば、種の間で生存競争が繰り返され、敗者は駆逐され余所に生存域を求めては移動し、先々で既存勢力と対決しながらその生存環境に適応しようとします。それが適わなければ絶滅します。
 長野県の諏訪では高山帯・亜高山帯としての八ヶ岳の山岳地帯と、車山高原・霧ヶ峰・八島ヶ原などの山地草原や諏訪大社周辺の社叢域など、その生態的環境は高度差を含めて植生が多様で、そのため種々の哺乳類の生存を可能にしました。

2、諏訪の哺乳類(ニホンザル)
 
 諏訪の城跡、朝倉山から茅野市北山柏原の集落を眺める
 哺乳類の中でもニホンザル・カモシカ・ヤマネなどは、日本列島で高い固有性をもつようになります。
 サルは大きく分類しても世界には約250種いるといわれています。ニホンザルは、アフガニスタンからインド北部・中国南部一帯にかけて分布するアカゲザル、本来はフィリピンやスマトラ島・ジャワ島などに分布していたカニクイザル、台湾の固有種のタイワンザルと近縁するといわれています。朝鮮半島にはサルは生息していませんから、日本列島には中国南部と通じる陸橋を渡って来たようです。最も近縁なのはアカゲザルで、500,000年前に分化したと推定されています。ニホンザルの特徴は、顔や臀部に毛が無く、色素もないため、血液が透けて見え赤色をしている事と、毛が長く尾が短い点です。
 ニホンザルの北限は、青森県下北半島で、サルはもとよりヒト以外の霊長類が生存する最北端でもあります。主として照葉樹林や暖帯・温帯落葉樹林帯に生息するが、ブナ林やナラ林などの冷温帯林にも適応しています。東北地方や中部山岳地帯の厳寒期、零下20℃、積雪数mに達する厳しい環境下でも群れをなしています。現在では主として山地林を生息場としていますが、旧石器時代遺跡に遺存する食物の残滓からサルの骨が検出されていますから、平地林にも広く分布していたようです。
 諏訪地方のニホンザルは、八ヶ岳山麓や諏訪市湖南の西山地域では、戦前からその姿をみることはありませんでした。昭和25(1,950)年に標高2,100mの大河原峠で20匹位の群れの目撃情報がありますが、それ以降、八ヶ岳山系・白樺湖周辺・北山の山里で、群れから離れた「ひとりザル」が入り込む程度です。 釜無谷では、標高1,000m〜2,000m範囲で、いくつかの群れが生息し、南アルプスから富士見町まで周回しています。
 ニホンザルは、雑食性ですが主に植物質に依存しています。樹皮・若芽・葉・種子や果実などを食べますから、生活の場は広葉樹が多い森林に限られます。ただ定住することはなく、絶えず食物を探して一定のルートを周回するのです。
 釜無谷に来るニホンザルの摂食痕や糞などの分析によれば、1月〜4月にかけては、ヤマクワの樹皮・アレチマツヨイグサのロゼット葉や時にはミズナラのドングリが含まれていたとようです。枯れ草の中から掘り出したのでしょう。5月、桜が開花すると、その花や芽や若葉を、やがて昆虫を食べ始めます。夏にはヤマブドウ・スグリ・ニガイチゴの液果とまさに豊潤で、秋はミズナラのドングリ・クルミ・クリの実を好みますが、キノコも食べています。
 ニホンザルは落葉広葉樹林を拠点にして、四季折々の食物を求め、春には里近くの平地や樹林帯に下り、次第に標高の高い所へ移動し、秋はドングリやクリを探し、積雪期になると再び、釜無山の東麓、釜無川沿いの今ナギの里近くにまで来ます。
 ニホンザルの雌は3歳頃、雄は4歳頃に性的に成熟し、5、6歳で出産が可能となり、通常、隔年の5、6月に1仔を出産します。寿命は25年〜30年といわれています。

3、諏訪の哺乳類(ニホンカモシカ)
 「中国国際放送局」は、2011年1月23日、「保護措置が効果的に実施されたことから、チベットにしかいないチベットカモシカの数が20万頭余に増えた」と発表しました。
 ゴーラルは中国、朝鮮、モンゴル、インド、ミャンマー、ヒマラヤに生息する体長90〜130p、体重22〜32kgほどで、カモシカの仲間です。カモシカにはシカの名が入っていますが、シカの属するシカ科ではなく、ウシやヤギと同じウシ科に属します。そのためシカとは違い、雌雄ともに角があり、ウシ科のほかの種同様、角は枝分かれせず、生え替わることもありません。
 狭義には、シャモア族カモシカ属(シーロー属)の動物を呼び、中国南部からマレー半島とスマトラ島の山岳地帯に生息しているスマトラカモシカやニホンカモシカ・タイワンカモシカの3種が現存しています。これらはアジアの山岳部を生息域とし、飛石的に分布し、氷河時代の生き残りとも生きた化石ともいわれるほど古い型の動物だそうです。
 日本では、三重県・岐阜県・滋賀県との県境沿いにある鈴鹿山系や日本アルプス・東北地方の山岳部で密度が高く、一方、最近の調査によれば、九州全体で600頭程度と推定されており、近い将来の絶滅が懸念されています。四国では既に絶滅したといわれています。かつてカモシカは、シカと同様に、肉は山村の大切な蛋白質源であり、毛皮も貴重な現金収入源でした。
 近世の旅マタギは、銃器を携帯せず、鉱山労働者や樵・薬草採取を生業としながら、寒中、槍や撲殺具などでカモシカを猟し、初春には越冬するツキノワグマを殺傷する穴見猟を行っていました。明治から昭和の初期にかけてもカモシカは盛んに捕獲され、軍事用防寒毛皮として重宝され、やがて絶滅が危惧され、1大正14 (1925)年には禁猟となったものの、乱獲は止まらず、戦後は登山ブームで、毛皮は高級な「尻皮」としてもてはやされ、密猟は絶えませんでした。
 諏訪地方でカモシカが最も濃密に生息しているのが八ヶ岳山塊です。中でも立場山・広河原沢奥・立場沢上部・キレット・横岳・硫黄岳ジュウゴ沢・峰ノ松目赤岩・シラナギ沢・北横岳・蓼科山などです。西岳にはカモシカはいないといわれています。
 コメツガ・シラビソ・オオシラビソ・ダケカンバ帯などを主な生息場とし、上層ではハイマツ帯の下部まで達し、その行動圏にはガレ場や岩場が必ずあるといわれ、分布の下限はカラマツ植林地の標高1,500mあたりまで下りています。
 通常1800m以下でシカが生息し、カモシカはそれより上部にいるとことが多いのですが、次第に生息地が下部にまで及んできています。標高1,700mにある蓼科高原と八子ヶ峰の間の茅野市又一地区でもみられ、蓼科山や北横岳から分布を拡大しているようです。
 また横河川流域の標高900mあたりのアカマツ・カラマツ林から、1,800mのミズナラ雑木林までのガレ場や岩場でもよくみられるようになり、また標高900mの砥沢流域の萩倉入口でも度々確認されています。美ヶ原山地や鉢伏山の個体群に属するものといわれています。
 西山山系守屋山に近い諏訪市の田辺山でも、標高1,400mあたりの雑木林を生息圏としています。入笠山か上伊那方面から下って来たようです。入笠山・釜無山山系の白岩岳釜無山は南アルプスに連なるため生息密度は諏訪地方では、特に濃いといわれています。
 カモシカは高山・亜高山帯の動物とみられていましたが、富士見町の釜無、標高1,000mの集落にも現れています。山地帯森林でも適応しているようです。ただ、その生活圏内で共通しているのが急峻な岩場やガレ場があることです。岩場から見張り、危険を察知すればガレ場から逸早く対岸へ逃れる手立てです。
 毎日同じ場所に留まることなく、夜間に活動する例もあるようですが、朝と夕刻の移動に限られるようで、特に朝の採食と移動が主で、日中は専ら反芻休息で過ごします。寝屋は横河川ではカラマツ林内に斜面を掘って平らにしている場所であり、八ヶ岳ジョウゴ沢では大岩が突き出した場所で見付かっています。糞は採食場や反芻場の近くで溜められている場合が目立ちます。カモシカ道は常時移動に利用する道ですから、僅か2、3頭でも度重ねれば、山の急斜面でも平らに抉られ「通い道」となります。灌木類など平然と無視し、強引にそれを踏み敷きます。通常、余程の環境変化がない限り、その決まった方向と同一範囲で行動しています。キツネ・タヌキ・ハクビシンなどは、既存の獣道を平然と通いますが、こうした「渡り道」を独自に作り出す習性は、シカ・イノシシ・クマにも共通しています。
 コメツガ・シラビソ・オオヒラビソなどが植生する八ヶ岳の亜高山帯針葉樹林帯では、標高が高く、極めて厳しい気象環境のため動物相・固体数ともに、山地帯とでは比べようもないほど少ないです。それでもシカ・カモシカの大型獣が、比較的樹間が疎らな森林に数多くみられ、その下生えに多く依存しています。しかも樹間の疎と密を上手く活用し、疎の場所で高栄養の草本を食し、危険を感じれば密な樹間に身を隠します。
 諏訪地方のカモシカの食性は、八ヶ岳の亜高山帯針葉樹林地域では、夏はオオイタドリ・セリ・ヨモギなどの草本とダケカンバの幼樹・ネコヤナギやミヤマハンノキの樹皮、秋はアザミ・ヨモギ・センキュウ・オタカラコウ・セリなど、夏の横河川上流の長沢ではオオイタドリ・ヨモギ・ヨツバヒヨドリ・アザミ・ヤマウド・シシウド・キボウシが食害に遭っています。秋も草本が主体で、オタカラコウの葉・ミゾソバ・アザミ・ヨブスマソウなどの他、ススキまでも食していました。春となればフキノトウやカンゾウが好まれているようです。
 カモシカはウシ科ですから、雌雄両方に角があり、先端は研ぎ澄まされ、やや後方へ曲がっています。その行動圏内には「角とぎ跡」が残っています。その痕跡はコメツガ・シラビソ・ヌルデ・ツリバナなど、樹種を限定せず研いでいます。その角で野犬が刺された事例もあります。
 秋から冬にかけてが、カモシカの繁殖期です。この期間中、カモシカのメスは約20日おきに発情します。発情期間はおよそ3日で、その間、尻尾を振りながら鳴いたり、落ち着かない様子でうろうろしたり、食餌の量が減ったりします。発情中でもほとんど鳴かない個体もいますが、鳴く個体はそれぞれ鳴き方が違います。
 1,976年10月8日、15:00〜15:45、ちょうど八ヶ岳硫黄岳ジョウゴ沢で認められたカモシカの雌雄は明らかに発情期とみられ、求愛から交尾にいたる瞬間まで観察されました。雄は大きく、雌はやや小型で20mほど離れていました。
 「雄が雌に5mくらいに近接」⇒「雄・雌鼻を合わせる」⇒「雄が雌の廻りを一回りする」⇒「雄の左前肢で雌の尻を叩く」⇒「尻をこする」⇒「後ろへ回る」⇒「後方から雄が雌の背に乗り交尾行動」⇒「背中に乗ったまま雌の腹をこする」⇒「1回目の交尾が終了」⇒「雌が移動」⇒「雄が追う」⇒「雌の脇腹をこする」⇒「雌の周りを一回りする」⇒「雄は山側に上がり雌を誘う」⇒「雌が近付く」⇒「雄が雌の脇腹をこする」⇒「雌山上へ去る」
 出産は年1回、4月〜6月にかけて1仔を産む、生後3年で発情期を迎えます。

4、諏訪の哺乳類(ヤマネ)
 ヤマネ(山鼠)は日本の特産種で天然記念物です。1科1属1種の哺乳類で、ネズミ目ヤマネ科ヤマネ属に分類される齧歯類す。同属の化石種はヨーロッパの鮮新世の地層から発見されています。大陸系ヤマネからは、数千万年前に分岐したと推定され、日本列島のヤマネは高い固有性があり、遺伝学的研究によれば、別種と言ってよいほどの差異が見られるそうです。
 日本では、本州・四国・九州と広く分布していますが、生息域は限定的で青森・岩手・山形・栃木・長野・山梨・神奈川・静岡・徳島・高地・大分・宮崎・熊本の各地です。
 諏訪では、八ヶ岳硫黄岳の北にある夏沢峠やクロユリ平・渋ノ湯・美濃戸山荘などの亜高山帯針葉樹林帯の標高1,700m以上と、車山山麓の茅野市北山柏原の標高1,300m付近に繁茂するミズナラ・シラカバなどの広葉樹林帯でも目撃されています。歩くときは、体が地面をこするような姿勢で、前足と後ろ脚を広げ、体をやや左右にゆすりながら歩きます。
 この天然記念物が諏訪地方に広く分布し、茅野市北山の八子ヶ峰山麓・白樺湖畔・岡谷市横河川の上流域・下諏訪町砥川の上流・富士見町の釜無山地を主な生息域としています。針葉樹林帯と広葉樹林帯の双方を生息域とし、体長わずか8cm、体重18gほどのネズミやリス似た動物です。意外にも多様な自然環境に適応しています。
 森林を生存域とする樹上棲で、直径わずか1oに過ぎない細い枝にぶら下がり、秒速1.2mという猛スピードで駆け抜けます。逆さまで走る動物は、日本ではヤマネだけです。また枝の間を跳躍し飛び移り、後肢だけで樹上にぶら下がることもあります。夜行性で日中は巣の中で眠っています。日中は起こそうとしても、体温が上がらなければ、覚醒するまでに相当な時間がかかり、外気が上がり体内の温度があがれば活発化します。成獣は激しく咬みつきますので手出しには十分な注意が必要です。浅間山麓の個体群では雄2ha、雌1ha弱の行動圏内で生活するという調査結果があります。活動中はどこでも糞をするので生息域調査には便利です。
 春から秋には日中の休息場が必要で、通常巣をもっています。樹洞にコケや樹皮を集めて巣を作り、岩の上や割れ目、スズメバチの古巣を利用したりしています。八ヶ岳では小鳥の巣箱を利用している事例が多くみられます。秋には山小屋に入る例もあります。キツツキ類が樹幹に空けた巣穴を、営巣して占有していたりします。
 カシガリ山の東南山麓にある「緑の村別荘地」では、別荘の板壁の隙間や節穴から出入りし壁内の空間を巣にしたりしています。爪が掛かりさえすれば壁などでも敏捷に移動ができ、別荘内の屑かご・靴・布団の中まで入り込んでいます。浴槽内に落ちて這い上がらず死亡した個体もありました。
 外気温が12〜14℃以下に、例えば長野や山梨では10月〜翌4月、和歌山では11月〜翌2月頃です。樹洞・腐った木の樹皮の隙間・木の根もとのうろなどや、地面の窪地に樹皮を敷き、落ち葉で覆ったりして球巣を作ります。単に落ち葉の下などで冬眠もします。複数の個体が集まって冬眠することが多いようです。冬眠中は食事を取らず秋季まで蓄えた体内の脂肪を消費し、外気温にあわせて低体温を維持します。軽井沢で1月中旬と下旬で調べた結果があります。外気が3.5℃〜-12.2℃の時、洞内温は-1.6℃〜-8.8℃であったようです。冬眠中は頭を後肢と尾で包み丸くなります。心拍数は一分間に50〜60回、深い眠りで体温が上がらない限りはころがしても目覚めません。
 食性は雑食で、主にトンボ・バッタ・コオロギ・ヤブキリなど昆虫類を食べますが、果実・種子・木の芽・穀類・鳥類の卵なども食べます。入笠小屋では、シジュウカラが壁の間に巣を掛けたところ、ヤマネが食べてしまったようです。山梨県北杜市清里ではヤマネが寝ていた鳥の巣の中からシジュウカラの亡骸と卵が出てきたそうです。抱卵しているシジュウカラを襲い、満腹でその場に寝てしまったようです。果実は皮を残して、中身だけを食べます。
 繁殖形態は胎生。飼育下では冬眠が明けて2週間後に交尾した観察例があり、妊娠期間は平均33日で、1回に3〜7頭の幼獣を年に1、2回に分けて産みます。生後10日から15日で開眼し、生後20日位には自分で食物を食べるようになります。寿命は3年で、飼育下では8年の記録があります。

5、諏訪の哺乳類(ツキノワグマ)
 北からはヘラジカ・ヒグマが氷河期、アジア大陸の東縁部であったころの本州にも既に生息し、旧石器時代には、ヘラジカ同様盛んに狩の対象動物となり、本州ではヒグマは絶滅し、ヘラジカは北海道ですら生息していません。ツキノワグマ(月輪熊)は南方から渡り津軽海峡で北進を阻まれました。
 ヒグマはホッキョクグマと並びクマ科では最大の体長を誇り、日本に生息する陸棲哺乳類でも最大種です。ヨーロッパからシベリア、さらにベーリング海を越えて北アメリカまで広く生息圏を広げています。ヒグマは、野生動物ほぼ全体の特徴である、栄養状態によって生じる個体差が顕著で、北海道のヒグマのオスの成獣で500kg程度に達するものもありました。北海道のものは本種の1亜種でエゾヒグマよばれますが、形態上に大きな差があります。
 アラスカのコディアク島に生息するアラスカヒグマは体長2.8m、体重700kgを超すといわれ、ヨーロッパヒグマは200kgにも達しません。かつてアイヌ民族は、ヒグマやエゾタヌキなど狩猟の対象となる生き物を、「神が人間のために肉と毛皮を土産に持ち、この世に現れた姿」と解釈し、北米先住民も、ヒグマをはじめとするクマ類を信仰の対象としていました。
 ツキノワグマは、世界のクマの中でも中型で、アジア北部およびロシアにも広く生息していますが、アフガニスタンでは絶滅し、バングラデシュや朝鮮半島では絶滅が危惧され、旧ソビエト連邦での1970年代における生息数は6,000〜8,000頭、1985年では4,600-5,400頭、中国での1995年における生息数は12,000〜18,000頭と推定されています。日本では中部以北に多く、四国では僅かに生息しているようですが、九州での目撃例が、昭和32(1957)年以降、途絶えます。平成24(2012)年8月28日、環境省は絶滅するおそれのある野生生物の種の一覧「レッドリスト」の改訂版を公開し、その中でニホンカワウソと共に九州のツキノワグマを「絶滅」に指定しました。昭和62(1987)年に大分県豊後大野市の山中で雄が射殺されたものが最後の記録となりました。
 諏訪地方のツキノワグマは雑木林を棲みかとし、カラマツの植林内では生存痕が認められていません。岡谷方面では横河川の上流、下諏訪では砥川の上流、砥沢・赤渋沢や下社の御柱が伐り出される東俣国有林などが生息圏です。車山の南麓でも米沢北大塩や塩沢北部からカシガリ山にかけて、また山ノ神・入八壺・「又一」や湯川の杜鵑峡(とけんきょう)と広く分布しています。
 蓼科では横谷渓谷の山沿いでの目撃情報が多いのです。ただ八ヶ岳では食物採取で通過するだけで定住はしていないようです。標高が高いため八ヶ岳山麓では、餌場としての広葉樹林帯がもともと限られているのに、戦中・戦後の乱伐が重なりツキノワグマの生息環境が失われ、戦後その大部分にカラマツが単一植林され餌場が復活しませんでした。さらに八ヶ岳南麓には、富士見保健休養地別荘地・原村別荘地とペンション開発地・茅野市泉野南蓼科台別荘地・茅野市北山蓼科温泉別荘地・白樺湖別荘地などが乱開発され、ツキノワグマの生息地が狭まり、夏秋季に餌をあさりに通過しても定住は困難となりました。
 諏訪の猟師は、富士見町方面では釜無山に集中し、諏訪圏内でも、最も個体数が多いといいます。諏訪圏内の下部で分布する地域は、人家に近い標高760mあたりの富士見町の蔦木や標高940mの茅野市米沢北大塩あたりで、上限は標高1,600mの下諏訪町の八島ヶ原湿原の南側の観音沢あたりのミズナラ林までです。 ツキノワグマの生息圏は、山地広葉樹林の植生帯で、その食性は主に草食に偏った雑食で、春はブナなどの新芽を、夏は主にアリ・ハチなどの昆虫類とアザミなどの草本類を、秋はドングリ・クリなどの堅果類やスグリ・アケビ・ヤマブドウなどの漿果類に依存します。秋は特別で冬眠に備え大量に食べるためアリ・ハチの巣を壊し食します。特に蜂蜜が大好物です。それでも主食のドングリやクリに多くを頼ります。ツキノワグマが一つ一つ細かい食物を主食しながら、その体重は雄で150kgにも達しています。コメツガやシラビソ林であれば通過する価値も、暇もありません。
 かつてツキノワグマの胃の内容物調査では、ノウサギの毛・骨・爪があった例もありました。偶然ノウサギの残骸に遭遇し食したのかもしれません。
 本州に入り津軽海峡に北進を阻まれた種が、ニホンザル・ツキノワグマ・カモシカ・ムササビ・モグラ・ヒミズ・ヒメネズミ・ジネズミ・カワネズミです。朝鮮半島・沿海州・カラフトから北海道に進出し、大陸北東部から北海道に移動し、南進を阻まれたのが、シマリス・クロテン・ナキウサギ・エゾヤチネズミ・ムクゲネズミ・オオアシトガリネズミがあり、本州には野生種としては生存していません。

6、諏訪地方の植生区分からみた動物
 諏訪地方は本州の中央部にあり、太平洋と日本海まで、100km程に距離をおく列島中央にあり、しかも高地であるため内陸性特有の気候状態にあります。諏訪郡で最も低所にある諏訪湖の標高は759mあります。その諏訪郡の年間の平均気温は10℃前後で、降水量が少なく、最多降水量は6月で、冬期でも太平洋側の気候下にあり降雪量が少ないのです。
 そのため日本側とは違い冬の積雪が少なく、山地帯から高山帯の下部あたりでもイノシシ・シカがしばしば目撃されています。またノウサギが白い冬毛にまとわれることが少なく、白色型が多い多雪の北信地区と違い、圧倒的に褐色系が多く、鳥獣保護員や狩猟家の聞き取りよれば、30:1ないし50:1の割合といわれます。中型哺乳類として広範囲に生息し、キツネ・テン・イタチ・オコジョの食物となり、ワシやタカなどの猛禽類にも捕食されています。本来夜行性で移動経路は、ほぼ一定し「うさぎ道」ができています。林道があっても、それにより移動することなく、低木の繁みを縫うようにして、猛禽類のキツネやテンからの捕食を回避しています。それでも獣道を横切るさいにキツネの餌食になっているようです。
 諏訪地区に生息する諸動物のハビタット(habitat:生息地)は極めて複雑で、まさに諸時代の環境変化に見事に適応してきています。動物類は、植物を消費しエネルギーに変えている。イノシシ・シカ・クマなどの大型哺乳動物は、食料の消費が極めて激しく、その捕食量が多量であるため、テリトリーの範囲が広まります。
 ネズミ・ウサギ・リスなど広範囲の移動を必要としない小哺乳類は、生息地の樹林と林床の性質に適応します。
 諏訪地方の大型哺乳類や鳥類は移動力があり、隣接する周辺領域とも深い繋がりがあります。ツキノワグマは岡谷市横河川・茅野市北山・入笠山系・西山系に広く分布するうえに、行動圏は、それぞれ隣接する塩尻・北佐久・小県・上伊那や山梨県にまたがっています。イノシシもツキノワグマに似ています。
 八ヶ岳のシカは、かつての西山保護区に高密度に生息しています。この地域のシカは、山梨県側の斜面や八ヶ岳の東斜面と、遠く秩父山塊より入って来たようです。
 諏訪地方の植生区分の中で、最も動物相が豊かなのは、クリ・コナラ・ミズナラなどの山地広葉樹林帯です。諏訪地方では標高1,000m付近から1,800mの亜高山帯下部にかけて分布しています。その樹叢は、諏訪地方では植林されたカラマツ林と同様、もっとも広大な面積を有しています。アカネズミ・ヒメネズミ・ジネズミ・ヒミズモグラなどの小哺乳類をはじめ、キツネ・ノウサギ・ヤマネ・リス・ニホンザル・タヌキ・アナグマ・テン・イノシシ・シカ・ツキノワグマなどの中・大型哺乳類の殆どが、この山地広葉樹林帯で生息している。
 諏訪地方では、カラマツの植栽林やアカマツ・スギ・ヒノキなどの山地針葉樹林帯に生息する動物相は、落葉広葉樹林帯に比し種構成も限られ、個体数も少ないようです。スギ・サワラ・アカマツの大樹には、ムササビやリスが好んで生息しています。カラマツ林ではアカネズミ・ハタネズミなどのネズミ類が、特に冬、その幼木の樹皮や根を食害します。山地針葉樹林では、キツネ・ノウサギ・ヒメネズミ・ヒミズモグラ・テン・イノシシ・シカが、八ヶ岳ではカモシカが生息しています。
 ヤマネ(山鼠)・ヒメネズミ・ヤマネズミ・カゲネズミ・ミズラモグラ・ヒメヒズミ・トガリネズミ・モモンガ・オコジョ(別名:山鼬)・テン・ノウサギ・リスなど、意外に種構成は多様ですが、個体数が少ない種が多くなります。

7、諏訪地方の小哺乳類
 ネズミは、哺乳類ネズミ目(齧歯目)の数科の総称です。世界レベルでみれば、哺乳類中最も多く、1,000種以上が含まれ一大グループを形成し、現生哺乳類の約半数を占めています。諏訪地方では世界最小の哺乳類といわれるトガリネズミ(尖鼠)やそれよりやや大きいジネズミ、水中の生物を食物とするカワネズミの3種が、トガリネズミ科に属しています。
 トガリネズミは、日本には北海道のエゾトガリネズミ、本州にシントウトガリネズミ(ホンシュウトガリネズミ)、四国にシコクトガリネズが生息しています。いずれも温帯または寒帯に分布し、これらの地域の地表に形成される落葉層や腐植層を主要な生息場所としています。日本のトガリネズミは頭胴長は10cm以下の小形で、名前のとおり吻(ふん)が細長くとがり、目は小さく、耳の大部分が毛に埋まっています。
 トガリネズミ科の3種、トガリネズミ・ジネズミ・カワネズミの大臼歯は咬頭ですから肉食です。昆虫・クモ・ジムカデ・ミミズ・甲殻類などを主食とします。いずれの種も各個体が明瞭なテリトリーをもち、それが冬の生存率に関係するといわれています。春が主な繁殖期でありますが、秋にも繁殖するものもあります。
 八ヶ岳のトガリネズミの調査記録によれば、4月上旬、越冬に成功した個体群は、体重3.5gが平均で、それが5月には、5.5g、6月8.5gとなり、7月以後になると生食活動を盛んにします。8月にはその年に誕生した幼体が加わり積極的に活動すます。10月になると前年に誕生した個体の殆どは老成体として死滅します。その寿命は僅か1〜1.5年に過ぎません。
 トガリネズミの繁殖期は4月〜6月が通常で、しかも年1回です。子は無毛で生まれ、17〜21日で開眼します。春に生まれたものが秋に成熟することもあるが、通常は次の年に繁殖活動をします。寿命は通常1年以内で、最大16か月と短いです。代謝率が高いため昼夜を問わず活動し、各個体は1〜2時間の周期で活動と休息を繰り返すことが知られています。
 北ヨーロッパから北海道まで分布するチビトガリネズミの頭胴長4.5〜5p、尾長2.7〜3pで、世界最小の哺乳類の一種です。北アメリカ北部のミズベトガリネズミは水生適応し、北海道のオオアシトガリネズミは半地下性に適応した種です。
 ネズミ類の天敵は多く、その繁殖力で、キツネ・テン・イタチ・タヌキなどの哺乳類、フクロウ・ノスリ・イヌワシ・カラスなどの鳥類、マムシなどの爬虫類など、その旺盛な捕食を満たしています。
 諏訪地方のトガリネズミは八ヶ岳の亜高山帯針葉樹林に多く、その樹林帯の林床にはミズゴケが厚く密生し、ヤチネズミやヒメネズミも棲みかとしています。雪が積もる冬期でもトガリネズミは活動しています。近年、車山高原や霧ヶ峰の山地草原でも目撃され、従来、森林帯に依存する種と見られていた事が誤りと分りました。
 ジネズミ(地鼠)は、岡谷市湊の山地など低山帯森林や耕作地周辺を生存の場としているため、トガリネズミの生存域と重なることはありません。「ネズミ」の名前がついていますが、モグラの仲間です。モグラの仲間でありながら、地中で生活せずに地上で生活するので、発達した前足などは持っておらず、外見はネズミに近いのです。この属の仲間は、アフリカに76種、ユーラシア南部と南アジアに42種が知られています。寒冷地に多いトガリネズミ類とは異なり、温帯から熱帯において進化した動物です。頭胴長14p以下で、トガリネズミに似た動物ですが、耳が毛の外に突出し、尾は基部が太く、先細りとなり、短毛のほかに少数の長毛がまばらに生える点で異なっています。歯の先端もトガリネズミのように赤染せず白色です。
 カワネズミ(川鼠)は肢の指に硬毛が生え、それが「水かき」となり水中における素早い動きとなります。河川の水中生活に適応し、淡水産のカニ・エビ・水中昆虫・魚類などを捕食しています。魚類はドジョウ・イワナ・コイ・マスなどで、かつては用水路を伝わって茅野市北山柏原の養魚場に侵入しコイを捕食するなどしていました。佐久地方でもコイやアユの被害が出ています。
 近年の河川の改修工事と、それに近接する事が多い道路建設や農地圃場整備では、河川の生態系を全く無視して、景気回復事業として繰り返され、著しい河川流域の環境破壊となり、その流域の諸生物を絶滅させてきました。それを食物とするカワネズミは、近年著しく減少しています。

 ネズミ類の優れた繁殖力により、諏訪地方の多様な環境に適応し、諏訪湖畔から八ヶ岳亜高山帯の森林限界まで多量に分布し、イタチ・テン・キツネなどの肉食動物の食物として諏訪地方の生態系の中で重要な位置を占めています。その一方では農林業や日常生活に悪影響を与え、時には病原菌を拡散させる事態を発生させます。
 小哺乳類の優占種を垂直的な植生変化で比較すると、山地広葉樹林帯下部の原村の菖蒲沢では、クリ・ミズナラ・クルミなどの林にアカネズミ・ヒメネズミだけが生息し、優占種は種実や昆虫を食するアカネズミです。
 山地広葉樹林帯上部にあたる標高1,760mから上の茅野市豊平の美濃戸・柳沢・カドコバ(角木場)周辺では、ミズナラ・シラカンバ・カラマツ混交林内でヒメネズミが繁殖しアカネズミは極度に減っているようです。
 標高1,990m、亜高山帯下部の豊平の柳川北沢のコメツガ・シラビソ・ダケカンバの混交林では、ヒメネズミ・ヤチネズミが優占しアカネズミはいないようです。食中類ではヒミズに代わってヒメヒミズが多く、亜高山帯上部の阿弥陀岳下のコメツガ・シラビソ林ではヒメネズミ・ヤチネズミ・ヒメヒミズ・トガリネズミの4種がいて、ヒメネズミが優占種です。
 高山帯の阿弥陀岳上部のハイマツ草本帯では、ヤチネズミ・ヒメネズミ・トガリネズミが棲息し、優占種はヤチネズミです。
 八ヶ岳の小哺乳類は、ヒメネズミのように、どの植生区分にも生息するが、優占種でみれば、垂直的な植生変化の影響を受けています。
 亜高山帯の鳥類は、山地帯とは種構成が異なり、八ヶ岳のコメツガ林では、メボソムシクイ・ヒガラ・キクイタダキ・ルリビタキの4種が優占です。高山帯では小哺乳類と同様、極めて貧相で、天狗岳の森林限界からハイマツ帯ではカヤクグリが、砂礫帯を中心としてイワヒバリが目立つだけです。

 小哺乳類では、天然林と草原がモザイク的に入り混じる植生地帯では、生息種も複雑で、諏訪大社上社の社叢では、アカネズミとヒメネズミがほぼ同一割合とみられています。霧ヶ峰を代表する園地・強清水・蛙原・池のくるみなどの山地草原は、植生が単純なうえ温度や湿度の振れが大きく、森林帯に比べ棲みにくいようで種構成も限定的です。ノウサギやキツネの夜間活動が活発で、近年シカも昼間から草原の到るところで出没しています。特にモグラ・ヒミズ・ヒメヒミズ・トガリネズミなどの地下生活型の食虫小哺乳類が多く、ハタネズミ(畑鼠)などは草食性に適応して特殊な形態となり、八子ヶ峰・車山高原・霧ケ峰の山地草原に高密度に生息しています。
 ハタネズミは北海道のエゾヤチネズミのように大発生する種です。そこには豊かな草本類が繁茂し、植物の根・地下茎・緑色部などを摂食する完全な植物性であるハタネズミの繁殖を助けてくれます。それを狙いキツネが夜間、周回活動をします。車山高原・霧ケ峰の山地草原では、豊かな草本類⇒ハタネズミ⇒キツネ・タヌキ・テン・ノリス・チョウゲンボウ・トビという食物連鎖があり、ハタネズミの異常発生を調整します。
 霧ヶ峰の草原では5月〜11月までを通してみると、牧草地内の個体数が最も多く、ニッコウキスゲ群落の1.6倍の密度といわれています。牧草は8月に刈り取られますが、9月、10月には再び他所にはない繁殖力を示します。次に生息密度が高いのがヨモギやヒメジョオンの群生地です。ハタネズミはキク科を好物としているといわれています。

 霧ヶ峰の山地草原に生息するハタネズミは、5・6月は未だ低温で地下生活が続きます。自分で穴を掘ったり、モグラなどの穴を利用したりして、地下にトンネル網を作り動き回るのです。穴の中に球形をした直径約20cmの巣室もみられます。6月中旬から7月上旬にかけて、草本類の芽が伸び出すに合わせて繁殖活動が行われます。繁殖率が高く、1回の繁殖期に2〜3回出産し、1回の産仔数は2〜7匹ですから大発生する場合もあります。生まれたては無毛で目が閉じています。生後6日ほどで切歯が生え、生後10日ほどで目が開き、巣の周りを動き回るようになります。
 7月までに出現した個体は、総て成体で占められ、体重は25g以上あり亜成体や幼体はみられません。前年に生まれ越冬に成功した個体群です。8月には気温の上昇に伴い草本類が繁茂し、地上活動が爆発的に活発化します。6月・7月に生まれた個体も加わり、幼体・亜成体・成体と幅広い令構成がそろう個体群となります。9月には大部分が幼体と亜成体となります。成体は拡散するか死滅します。10月になると急激に気温が下がり草本類の地上部が枯れますから地上活動は少なくなります。
当年に誕生した幼体も8月までには活発に活動し秋までに体重を増やし、9月の移動距離はより長く、活動の激しさが最大となります。10月・11月には行動圏がかなり狭まり、やがて固定化します。性的に未熟のまま越冬し翌春の繁殖に参加します。10月になると老成体として死に絶えます。寿命は1年3か月から6か月となります。雄より雌のほうが長生きだそうです。

 山地帯と市街地の中間の村落地帯は、モグラ・ヒミズ・ヒメヒミズなど森林に棲むものとドブンネズミやクマネズミなど家住性小哺乳動物が混在します。イタチ・テン・キツネも多く、水田や耕作地ではアカネズミ・ハタネズミ・タヌキ・アナグマなどよる、作物の被害が増えています。モグラは特に畑のミミズを食べに集まり、水田の水路や池には魚を盗るカワネズミが侵入しています。